【竹内結子さんが自殺した日…】私はある名も無き死人と対峙していた

女優の竹内結子さんが亡くなった。

自宅のクローゼットで首をつっているところを家族によって発見された。自殺と見られている。

私が初めてそのニュースをを知ったのは、式場に向かう車の中だった。

恐らく日本中の国民みんながそうであろうが、同僚からのメールに、目を疑わずにはいられなかった。

竹内結子さんといえば、日本を代表する女優だ。 その活躍は、今更改めてここに書くまでもないだろう。

ショックだった。 だが私の心を暗くした原因は、それだけではなかった。

式場に到着すると、真っ先に棺の蓋を開けてご遺体の状態を確認する。

良かった、綺麗だ。

何せ、死後何日か経過してから発見されたご遺体は、引き取りに伺った時には、腐敗が進み、ウジ虫が湧いていた。

ご遺族のたっての希望で、火葬のみの葬儀ではなく、通夜葬儀となった訳だが、ウジが這いずり回るご遺体をお見せする訳にはいかない。

想像して欲しい。自分の大切な人の目からウジ虫が這い出てきた姿など、即倒ものだろう。

通夜の前日に納棺師と二人、夜中までかかって、見える範囲は全て取り除き、薬品に浸した綿で穴という穴を塞いだが、それでも体の中を全て掃除することは出来ない。

奴らがいつ何時、姿を見せるとも分からない。 お通夜の日は乗り切ったが、一晩経ったらウジ虫まみれなんてことになったら洒落にならない。

丁寧に確認する。

残念ながら、2、3匹は出ていたが、これくらいならば想定内だ。

綺麗に取り除き、棺の蓋を閉める。

全てのご遺体に対して、最大限の敬意を持って接することには変わりはないが、今回のご遺体は特に気を使う。

そう、自殺だ。

詳しくは書けないが、二十歳そこそこで一人暮らしをする自宅の一室で自ら命を絶ってしまった。

遺された両親の落ち込みは尋常ではない。

そしてここにきて、竹内結子さんの自死のニュースだ。

スタッフ全員に、その話題には一切触れない様にと箝口令(かんこうれい)を敷くが、それにしてもまったく何て日だ!

しかしながら、アフターコロナとはつくづく我々は大変な時代を生き抜かされている。

竹内結子さんを自死に走らせた原因は、産後うつに加えて、コロナの影響だとか言われているし、目の前に横たわる若者は、コロナによる経済活動の自粛により、就職が上手くいかなかったことが原因だとか言われている。

もちろん本当のところは故人しかわからないし、様々な原因が複雑に絡み合っての悲劇だろう。

しかし、まるで空を覆う厚い雲の様な、コロナの閉塞感や実経済に与えたダメージが、彼らの死に小さくない影を落としていることは、間違いないだろう。

プライドのためのウイルスの隠蔽や、初動のミス、それでも食べていくために活動を止めるわけに行かぬ、グローバル経済の在り様・・・何と人間社会の業の深さよ。

それにしても・・・ 誰かが言った。

有名人ばかりが自ら命を絶っている様な報道が多いが、一般社会のそれの方がはるかに酷いと。

まったくその通りだ。

センセーショナルに報じられる有名人のその陰で、自らの手でひっそりとその人生に幕を下ろし逝ってしまった、名も無き死人たち・・・ 一体私はそうした人間たちを、この数カ月で幾人送り出してきたのだろうか。

三浦春馬さんの心の闇については、社会に向けた様々な代弁者がいる。

しかし、彼らには居ない。

残念ながらその想いにスポットが当たることはないのだ。 彼らにだって、声を大にして社会に訴えたかったモノが有っただろうに。

ほんの少しでも、その声は誰かに届いているのだろうか。

そんな無念のうちに自ら逝った、名も無き死人の死を想う。

いつかまた、コロナの無い、澄み切った空の下で生きられる日が来ることを願ってやまない。

遺された自死遺族の慟哭

自分の命をどうしようが自由。

そんなことを言う人達がいる。

しかし、後には遺される人がいる。

あなたは死んで、逃げてしまえば一番楽かも知れない。

でも、その死を背負って死よりも苦しい地獄を、何十年も生きていかなければならない人がいるかも知れない。

その事実は絶対に無視してはいけない!

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