【人工妊娠中絶手術とは?】中絶を考える人が知っておきたい13のポイント

男子大学生の中絶体験記

【知っておきたい妊娠と中絶のこと】

筆者(ユウスケ氏)が大学生の時に、彼女の妊娠中絶手術を共に経験した時の記録を、男性側の目線で書き記した体験談です。

少しでも、妊娠された方や中絶をお考えの方にとって、後悔のない選択ができる手助けになれれば幸いです。

この記事では、中絶を考える人が知っておきたい13のポイントをまとめて、人工妊娠中絶の基礎知識をわかりやすく解説します。

1. 人工妊娠中絶手術とは?

人工妊娠中絶手術とは、人工的に妊娠を中断するために行う手術です。

日本では【母体保護法】という法律で以下のように規定されています。

この法律で人工妊娠中絶とは、

胎児が、母体外において、生命を保続することのできない時期に、人工的に、胎児及びその附属物を母体外に排出することをいう。

(出典:母体保護法第2条

つまり、『まだ自分の力ではお母さんの体から出てきて生きることができないうちに、人工的にお腹から外に出す』ということです。

一般的には【堕ろす(おろす)】と言われています。

日本の刑法では【堕胎(だたい)】を呼ばれます。

産婦人科など医療関係者の中では、【アウス】と呼ばれています。

ドイツ語の【Auskratzung(外へ引っ掻く)】または【Ausräumung(外へ取り除く)】が由来です。

英語では【abortion(アボーション)】と言います。

2. 中絶手術をするための条件

日本では【母体保護法】で人工妊娠中絶が認められています。

しかし、どんな場合でも中絶手術が許されている訳ではありません。

母体保護法により指定された『指定医師』が、以下の2つにうちどちらかに当てはまる妊婦さんに対して、本人と配偶者の同意を得ることで実施可能です。

一 妊娠の継続又は分娩が身体的又は経済的理由により母体の健康を著しく害するおそれのあるもの

二 暴行若しくは脅迫によつて又は抵抗若しくは拒絶することができない間に姦淫されて妊娠したもの

(出典:母体保護法第14条

なお、法律では配偶者の同意を取ることができない時には、本人の同意だけで実施できることとなっています。

しかし実際には、同意がないと後々トラブルになるケースが多いため、原則として配偶者の同意書を提出させるクリニック・病院が多いです。

海外で中絶が認めらていない国

【人工妊娠中絶手術とは?】中絶を考える人が知っておきたい13のポイント

海外の6カ国では中絶手術が認められていない!?

中絶に関する法律は、宗教・倫理・人口政策など様々な要因が関係するため、国によって様々です。

現在は、中絶手術が禁止されている国が6カ国あります。

『エルサルバドル』『チリ』『ドミニカ共和国』『ニカラグア』『バチカン市国』です。

その一方で、妊娠初期の「中絶薬」の使用が認められている国もあります。

日本では大量出血などの報告もあるため、現在のところ使用は認められていません。

3. 中絶手術をするまでの流れ

次に、生理の遅れに気づいてから、中絶手術を実施するまでの流れをまとめます。

ここに示した中絶手術の流れは、あくまで一例であり人によって流れは異なるかと思います。

また、産婦人科によって検査・手術の方法や費用も異なります。

詳細は「妊娠が発覚してから中絶後までの流れを16ステップで解説」の記事で解説しています。

【1】生理の遅れ

【2】妊娠検査薬でのセルフチェック

【3】産婦人科での妊娠検査

【4】パートナーや親との相談

【5】中絶することの決断

【6】手術前検査

【7】手術日の決定

【8】同意書の準備

【9】手術費用の約20万円の準備

【10】中絶手術の事前処置

【11】絶飲・絶食

【12】麻酔・手術

【13】手術後の検査

【14】パートナーとの話し合い

【15】お寺に行って水子供養

【16】日常生活に戻る

4. 妊娠期間の数え方の注意点

【人工妊娠中絶手術とは?】中絶を考える人が知っておきたい13のポイント

妊娠週数は、最後に生理が来た日を『妊娠0日目』としてカウントします。

実際に妊娠した日を起点に数えるわけではないので注意が必要です。

例えば、妊娠検査薬で陽性反応が出るのは妊娠5週〜6週ごろからです。

初期中絶ができるのが妊娠12週未満とされています。

つまり、多くの人は妊娠検査薬で陽性反応が出てから1ヶ月程度で中絶するか否かを決断する必要があります。

5. 初期中絶・中期中絶・後期中絶の方法とは?

妊娠の週数によって、手術方法や手術代などに大きな違いが見られます。

初期中絶は妊娠12週未満

妊娠初期は、『掻爬(そうは)法』と『吸引法』という2つの方法のどちらかで中絶手術を行います。

どちらの場合でも、事前処置で支給の入り口を広げておいて、静脈性の全身麻酔をし、15分ほどで終わることが多いです。

出血なども少なく、日帰りで手術を行うことができます。

吸引法

吸引法とは、子宮の中に管を挿入し吸引する手術方法です。

深い傷がつきにくく、医師の腕による影響もあまり受けないため、安全な人工妊娠中絶の方法としてWHOが推奨しています。

妊娠週数が少ない場合は吸引法が推奨されます。

しかしながら、日本では吸引法は普及しておらず初期中絶の10%ほどと言われています。

帝王切開を経験している場合、子宮破裂のリスクが高くなります。

掻爬法

掻爬法(そうはほう)とは、子宮の中をスプーンのような器具でかき出す手術方法です。

日本で最も標準的な中絶方法で、初期中絶の80%と言われています。

毎回の手術で機器を洗浄できるため、感染症のリスクが低いです。

リスクとしては、医師の腕による影響は吸引法と比較すると受けやすく、子宮に深い傷をつけてしまう恐れがあります。

帝王切開を経験している場合でも、子宮破裂のリスクは低いです。

中期中絶(人工死産)は妊娠12週〜22週未満

妊娠中期は、基本的に人工的な陣痛を起こす薬を使って流産させる中絶手術を行います。

胎児が大きく育っているため、通常の分娩のように取り出す必要があるためです。

数日間の入院が必要になり、費用も初期中絶と比較すると高くなります。

また、妊娠12週以降の中絶の場合、戸籍には残りませんが、死亡届を役所に提出して埋葬許可をとる必要があります。

人工的な陣痛での流産

子宮の入り口を広げる事前処置を行った上で、陣痛を誘発する薬を使います。

通常の分娩のように分娩台に上がり、赤ちゃんを産みます。

後期中絶は妊娠22週〜

基本的に妊娠22週を過ぎると『産みたくない』という理由で中絶手術を行うことはできません。

胎児が既にお腹の中で病気にかかっている場合や、妊娠を継続すると母体の命に関わる場合などに限られて、例外的に認められています。

後期中絶には、『人工的な陣痛での流産』と『帝王切開』の2つの方法があります。

人工的な陣痛での流産

中期中絶と同様に、人工的に陣痛を誘発して流産させる方法です。

子宮の入り口を広げる事前処置を行った上で、陣痛を誘発する薬を使います。

通常の分娩のように分娩台に上がり、赤ちゃんを産みます。

帝王切開

帝王切開は、下腹部にメスを入れて開腹し、すぐ下にある子宮の下部にもメスを入れて、子宮内から赤ちゃんを取り出す方法です。

手術は45分〜2時間ほどかかります。

6. 中絶費用にかかる合計費用の相場

妊娠初期(12週未満)の初期中絶の場合は、『20万円程度』かかります。

妊娠中期(12週〜22週未満)の中期中絶の場合は、『30万円〜50万円程度』かかります。

様々な産婦人科のHPを確認すると相場より安い費用で実施している医療機関もいくつかあります。

費用については直接主治医やクリニックのスタッフに確認してみるのが確実です。

7. 中絶は保険適用されるのか?

【人工妊娠中絶手術とは?】中絶を考える人が知っておきたい13のポイント

中絶手術は、『保険がきかない』場合がほとんどです。

診療を受けた時、保険が適用される場合は自己負担額が3割になりますが、保険がきかないということは全額(10割)負担となります。

8. 中絶手術のリスクや体への影響

『中絶手術をすると不妊になる』という迷信がありますが、実際にはそのようなことはありません。

信頼できる産婦人科で適切な処置をすれば、中絶によって体に問題が生じるリスクは出産した際に、母体の健康に問題が生じるリスクよりも低いと言われています。

9. 中絶手術は年間で何件実施されている?

日本での人工妊娠中絶件数は年間17万件

厚生労働省の調査によると、2016年度の日本での人工妊娠中絶件数は168,015件で、前年度に比べ 8,373 件(4.7%)減少しています。

また、20歳未満でも『14,666件』と決して少なくない件数となっております。

10代や若い世代の中絶件数

若い世代の2016年度の中絶実施件数は以下の通りです。

18歳:3,747件

19歳:6,111件

20歳未満:14,666件

20〜24歳:38,561件

(出典:平成 28 年度衛生行政報告例)

20〜24歳の女性の100人に1人が中絶手術を経験している

厚生労働省は、年代ごとに『女性1000人あたり何人が人工妊娠中絶を実施しているか』も計測して公表しています。

20〜24歳では、1000人当たり12.9人が中絶を実施しています。

決して少なくないということがわかるかと思います。

(出典:平成 28 年度衛生行政報告例)

10. 中絶を選択する理由

日本産婦人科医会が平成14年に実施した10代で人工妊娠中絶を受けた女性626名へのアンケート調査によると、10代の中絶理由として挙げられた理由の順位は以下の通りでした。

少し古い調査結果ですが、厚生労働省の資料でも参照されている調査結果なので信頼できる調査データかと思います。

10代の中絶理由

1位:収入が少なくて育てられない(67.7%)

2位:若すぎる(63.7%)

3位:未婚のため(46.3%)

4位:子育てに自信がない(44.2%)

5位:学業に差し支える(38.7%)

6位:親の反対(27.3%)

(出典:10代の人工妊娠中絶についてのアンケート(平成15年)

やはり経済的な問題が最も大きいようです。

15年前の調査ですので、最近の事情はもっと変わっているかもしれません。

その他の年代の中絶理由

上述のデータは10代の中絶理由でしたが、20代以降の大人の中絶理由には、

『仕事を優先したいから』

『不倫相手の子どもだから』

『犯罪などによる意図しない妊娠だから』

など様々な理由があります。

もちろん、大人であっても『経済的な理由』による中絶は少なくないかと思います。

また、胎児の状態が悪化して母体が危険に晒されたことによる、止むを得ない中絶などもあります。

信頼性の高い統計データは自分の調べた限り見つけることができなかったため、見つけ次第追記いたします。

11. 中絶手術をする産婦人科の選び方

【人工妊娠中絶手術とは?】中絶を考える人が知っておきたい13のポイント

医療は『情報の非対称性』が高いため、産婦人科の良し悪しを素人の目で判断することは困難です。

しかしながら、手術を実施する医療機関を1つ選択しなければなりません。

  • 『医療関係者からの評判』
  • 『レビューサイトの評判』
  • 『HPの説明の丁寧さ』
  • 『実績』
  • 『場所』
  • 『費用』
  • 『術式』
  • 『同意書の必要性』

などを確認して、納得のいく産婦人科を選びましょう。

12. 中絶手術後にやるべきこと

中絶後には、身体的なケアと精神的なケアをしていくことになります。

身体的なケアは、中絶手術をした産婦人科の主治医の指示に従いましょう。

精神的なケアとしては、様々な方法があるので、自分にあったものを選択することになります。

他者への相談

中絶後は、罪悪感を感じてしまうことなどが、どんな人でもあります。

そんな時に、1人で抱え込んでしまうと、自分の中で色々と悩みが膨らんでしまい塞ぎ込んでしまいがちです。

パートナーがいる場合、中絶した体験とどのように向き合っていくかを、話し合うことをおすすめします。

また、中絶後のケアを専門にしたカウンセリングなどもあるため、カウンセリングを受けてみることも、選択肢の1つとして考えてみましょう。

水子供養

絶対にやらなければいけないという訳ではありませんが、日本では中絶後にはお寺で水子供養をする人が少なくありません。

区切りがつき、定期的に過去と向き合うきっかけにもなるため、子どものためだけでなく、自分自身の心のケアのためにも有効かと思います。

13. 中絶以外の選択肢「特別養子縁組」「里親制度」

経済的な理由などで中絶を考えている場合、中絶せずに子どもは産んで、別の親に育ててもらうという方法があります。

日本ではまだまだマイナーですが、近年少しずつ増えてきています。

特別養子縁組

特別養子縁組とは、養親(育ての親)と養子が法的に実の親子のような扱いを受けることができる特別な養子縁組の制度です。

成立数は平成27年に542件で、ここ数年間で増加してきています。

(出典:厚生労働省|特別養子縁組制度について

里親制度

里親制度とは、育ての親になる制度です。

養子縁組を前提とした里親と、養子縁組はしない里親があります。

こちらも近年、少しずつではありますが増えてきています。

(出典:厚生労働省|里親制度等について

さいごに

中絶についてネット上には様々な情報が溢れているかと思います。

大学や学会のWEBサイトの情報は難しくてわかりにくい。

産婦人科クリニックのHPは、どれを信用できるのかわからない。

Yahoo知恵袋や個人ブログも色んな情報が溢れ過ぎている。

僕が過去に、不安な気持ちを抱えながらすがるような思いで色々な記事を読んでいた時は、そんなことを感じていました。

必要な情報である程度信頼できる情報がひとまとめにわかっていたら、もう少し楽に情報収集やパートナーとの相談を進められただろうと思い、このような形で中絶を考える人が知っておくべき13のポイントをまとめさせていただきました。

ほんの少しでも、お役に立てればと思います。

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