葬儀(主に葬儀並びに告別式)の重要な儀式
葬儀における僧侶の役割って何?
通夜に告別式、おもむろに斎場入りして訳のわからない作法やお経を唱えて帰っていくお寺のお坊さん。
宗教離れが加速する今、お坊さんって呼ぶ必要あるの?なんて声も大きくなりつつあります。
彼らはいったい何のためにやって来て、何をして帰っていくのか?
そんな疑問にお答えすべく、お寺をあの世への【旅行代理店】に見立てて、最も重要な剃髪の儀・受戒・戒名授与・引導を中心に彼らの役割を解説します。
※尚、内容は一般的な仏教の儀式としてお考え下さい。あの世までの旅が無いとされる浄土真宗など、宗派や僧侶によって異なる場合がございます。
プロローグ
浄土入国手続き代行ならお任せ!指定旅行代理店【極楽ツアーの天国屋】
あの~すいません。天国行きのチケット1枚欲しいんですけど・・・
今、天国ツアー(キリスト教)は取り扱いがありませんが、浄土ツアー(仏教)ならすぐにご案内が出来ます!
あっ、私いちおう仏教徒なのでそれで良いんですけど…
かしこまりました。大人1枚でよろしいですか?
はい。ちなみに片道どれくらい時間かかりますかね?私も結構な年なもんで…
一概に浄土と言っても、実は複数ございますが、阿弥陀様の極楽浄土以外はいずれの浄土も四十九日間のオールトレッキングコースとなっております
シ、シジュウクニチのオールトレッキング!?何とか日程短縮出来ませんかね・・・
出来ません!この世もあの世もそれ程甘いもんじゃございません。きっちり四十九日かけて徒歩で行っていただきます!
旅程はかなりキツいんですか?
大変厳しい、難関コースとなっております。ですので旅支度はきちんと整えられた方がよろしいかと存じます
それは喪主の子供たちがしっかり準備してくれましたが、結構大変なんですね・・・高齢者専用の特急列車みたいなものは・・・?
ございません!浄土に行こうってくらいですから、それくらいは頑張っていただかないと!
は、はぁ・・・(死んだら即楽できるワケじゃないんだ・・・)
ところでお客様・・・諸々のお手続きはお済みですか?
手続き?いや、していませんが何か?
いやいやいや、あり得へん。浄土とは仏国土、つまり仏の治める国、外国になります。中国だろうがアメリカだろうが、仏国土だろうが、所定の手続きの上、入国審査(イミグレーション)を通過しないことには、入国は認められませんよ!
ええっ!?そうなの?
当たり前じゃないですか!戦闘機が無断で他国の領空侵犯を犯せば撃墜され、人間が無断で入国を試みれば不法入国で入国管理局に逮捕されるのは、あの世もこの世も同じです!
し、知らなかった・・・
はは~ん。さては浄土が仏教徒といえば誰でも自由に入国可能なフリーダムな国だと思っていらっしゃいました?
え、ええ、まぁ、もうちょっと緩いのかと・・・
甘いですね~お客様。あの世の入国について、世界中どこを探してもそんな激甘な宗教は存在しません!
すみません・・・
仕方ありません。昔はもう少し違いましたが、葬儀の時だけ世話になる【葬式仏教】なんて呼ばれている現状を放置してしまっている、我々旅行業界にも大いに問題があるのですから…
そうですか…ところで私は浄土に行けますかね?
当店にお任せ下さい!ちなみにどの仏様の治める浄土に行かれたいですか?
???
質問を変えましょう。ご実家はどこの宗派でしたか?
曹洞宗です
お釈迦様のお浄土ですね。そちらで宜しいですか?
お恥ずかしながら良くわからないんで、それで良いです
かしこまりました。ちなみに各種手続きには指定の先輩僧侶が必要になりますが、当店には実績豊富な坊主が沢山在籍しております。今なら特に優秀なBOSE1(ボーズワン)が担当可能でございます
何かエアフォースワンみたいに言ってるけど、要は住職ですよね?
そうとも言いますね
じゃあ、それで・・・
有り難うございます。では早速BOSE1を向かわせます
開式~作法
はじめまして。それでは早速事前の手続きを始めさせていただきます。仏国土に入るには仏(釈迦)の弟子になる、つまり僧侶になることが必要になりますが、まずは仏国土の国境警備隊、入国管理局等を通じて、菩薩や如来などの国務大臣や国家元首クラスとやり取りし、先方に受け入れ体制を整えてもらう必要があります。では交信を開始しますね
剃髪の儀(おおかみそり)
さて、あなたは僧侶になるために、髪の毛を剃るなど、外見を整える必要があります。伸び続ける髪の毛が人間の欲望を連想させるなどの理由があるようですが、いずれにせよ仏国土は非常にデリケートな感情で形成されています。覚えておいてください。『女性は髪(神)が命!』とか、ふざけた事をぬかしたら、ぶっ殺します!
わ、わかりました…
「血脈」授与
次にこちらの封書ですが、血脈、つまり旅券(パスポート)になります。内容は『わたし、仏(釈迦)弟子になったよ~』というゴキゲンな証明証ですが、具体的に内部に書かれているのは、お釈迦様から始まって、弟子からそのまた弟子といった系譜が書かれた、謂わば家系図のような構成のモノです。あなたは私の弟子となりますので、私の下にあなたのお名前を書いておきました。これがいわゆるVISA(査証)ですね
さすがその道のプロ。至れり尽くせりですね
最近はEU間の入国制度に感化されたかどうかは知りませんが、代理店によって発行するしないはあるんですが、当店では必ずお付けしています。最初にお渡ししておきますので、お旅立ちの際は忘れずにお持ちください
ごっつあんです!
受戒
次に受戒、つまり戒を授けます。戒とは仏弟子としての決まり事、わかりやすく言うと仏国土の法律ですね。代表的なものを10個(十善戒)読み上げますが、全部合わせると男性で250個程度、女性で350個程度ありますので、六法全書をよく読んでしっかり守ってくださいね。良いですか?
結構有るんですね・・・分かりました。約束します
戒名授与
さぁ、お約束いただきましたので、その印として仏国土でのお名前を差し上げます。いわゆる戒名です。しっかり覚えてくださいね
今までの名前は使えないんですか?私、自分の名前、結構気に入ってまして…
一切使えません。国籍が変わるわけですから、致し方ありません。いつくか存在する仏国土のうち、あなたの目指す仏国土の形式に合わせて、私があなたの未来への希望を精一杯詰め込んだ力作をご用意いたしました!
お気持ちは有り難いんですが・・・今までの名前が使えないなら、自分で付けちゃダメですか?私、生前から自分で自分の名前を付けるのに憧れておりまして・・・それもダメならせめて子供たちに付けてもらうとか・・・
それも出来ません!ペンネームじゃあるまいし・・・だいたい勝手に付けられては我々の食い扶持が無くな・・・いやいや、この名前は遥か昔から、仏教世界の親に当たるBOSEの称号を持つ我々僧侶しか付けることは許されておりません。仏教の世界において、あなたは私の弟子、つまり子供です。子が自分の名前を自分で付けられないのと同じです。大丈夫!我々は間違ってもキラキラネームとか付けませんから
お願いします!
その代わりと言っては何ですが、親しみやすいようにあなたの生前のお名前の一文字を入れておきました
ちょっと融通がきかない部分もありますが、サービス精神旺盛ですね!
もちろんです!それと息子様(喪主)からギャラの方も世間的に見れば、少々大目の金額を頂いておりますので、戒名に関しては自然と力が入ってしまうというのもあります!
地獄の沙汰も何とやら・・・ボソボソ・・・
えっ?今何と!?
いえ、何でもありません・・・
引導
さて、突然ですが、北斗の拳風に言うと・・・『お前はもう死んでいる!』ええ、もうそれは確実に死んでるんDeath!☆*:.。. o(≧▽≦)o .。.:*☆
何ですか急に!?しかも無駄に明るいし…
本当に分かってます?本当に?本当に?本当に〜?
そう言われると・・・実はよく分からないんですよね、自分が本当に死んでしまったのかどうか…
大丈夫!それはみんな同じですよ。だからしっかり現実を分からせ、受け止めさせるのも、この引導作法の重要な役目でもあります
全てに思った以上に深い意味があるんですね〜。さすが、出来る男は違う!
Yes!We Can!
(なぜオバマ・・・)
金だけふんだくって!みたいに言われてるけど、ちゃんとやる事やってるんですよ…大体ウチはカミさんが厳しいから、小遣い少ないし・・・ブツブツ…
・・・・・・
うぉっほん。それは置いておいて…余談ですがこれまでの儀式は、大体が本来生きているうちに行うものですので、来世で生まれ変わった時の参考になさってくださいね
それではご住職のお力で、来世も人間に生まれ変われるように、仏様によーく頼んでおいてくださいね⤴︎
えっ?何か言ったかな?最近年のせいか耳の方がちょっと…
クソ坊主…
こらっ!師匠に向かって何て事を!
(良い耳してるじゃん…)
さあ、お喋りはここまで。これで所定の手続きは終了です。あなたは心置きなくあの世へとご出発なされてください
急に雑…でも、いざとなると何だかこの世を離れ難いものがありますね・・・
そうです!既に昨晩の通夜で縁者の『私たちは大丈夫だよ』という思いは、お経に乗せてあなたにお届けしましたが、そうは言っても中々…ですから、私が迷わず浄土へ行けるようにという願掛けも込めて、あなたのお尻を思いっきりひっぱたいて差し上げるのです!
デリケートな部分なんでお尻はちょっと・・・。でも最後は師匠自ら背中を押してくださるというのは有り難いですね
そのとおり。引いて導く!文字どおり『引導』を渡して差し上げましょう。それではいきますよ!
お願いします!
3・2・1、カーツ!!!
旅立ち
何だか勇気が湧きてきました!
これから先方の各関係省庁に最後のお願いや、今後の初七日の通関手続き、ついでと言ってはなんですが、ご当家の繁栄祈願から世界平和まで、各種祈願やその他残りの手続きはやっておきます
何から何まですいません
さお、準備はいいですか?餞別代わりに私が有り難いお釈迦様の教え(お経)をお唱えしてお見送りいたしましょう。さあお行きなさい!残された者たちが手向ける心よりのお焼香の煙と共に!
いざ浄土!
仏説~摩訶、般若波羅蜜多心経~。観自在菩薩 行深般若波羅蜜多時 照見五蘊皆空 度一切苦厄舎利子 色不異空 空不異色 色即是空 空即是色(有り難い教え)
それではこれより、お別れのお焼香でございます
師匠、いよいよお別れですね
ほら感じられるでしょう?残された者たちの『(私たちのことは)心配しないで』という想いが。迷わず行きなさい
みんなさようなら~また会う日まで!
お釈迦様、故人はどこまでも貴方様に付いて行くと申しております。私のクライアントをくれぐれもよろしく頼みますよ~!
まとめ
どうです?こんな感じです。
もちろん浄土真宗は四十九日間の旅をしなかったり、また僧侶によっては剃髪の儀を省略したり、真言宗や曹洞宗以外は血脈を持ってこないことが多かったり、読まれるお経も様々だったり、一部を通夜に執り行ったり・・・
宗派や僧侶によってマチマチですが、基本的には、
故人を称え偲び、残された者たちの『心配しないで!』という思いを故人に向けて存分に伝えた通夜を受けて、仏様に故人をよろしく頼みますとお願いし、入国の諸手続きを済ませた上で、力強くあの世へと送り出す!
この基本的な流れは一緒です。